京都、3時間の小さな旅

毎年、京都の御金神社で行われる節分の行事にご招待いただいていましたが、「今年こそは」と思いながらもなかなかタイミングが合いませんでした。
そして今年。少し前から予定を整えて「今年こそ行こう」と決めたのです。

その日は、これ以上ないというほど、すべてがちょうどよい一日でした。
冷え込みはありましたが風はなく、日中は明るい陽射しに包まれ、夜は見事な満月が空を照らしていました。
御金神社での行事もまた、静かで心に深く染み入るものでした。今回は豆まきはなく、厳かで神聖な儀式のみ。立ち会えたことを、しみじみとありがたく感じました。

翌日はお土産を買う予定でしたが、その前にどうしても立ち寄りたい場所がありました。
昨年お世話になった、伏見稲荷大社でお守りをお返ししたかったのです。
車を手配し、京都を3時間ほどでぐるりと巡るルートを組みました。

伏見稲荷に到着すると、すでに節分の準備が始まっていました。
本当は様子を見ていたかったのですが、残念ながら時間の余裕はなく、次の目的地へ向かうことにしました。舞扇のお店です。

ホテルでは、いくつか評判の良いお店を教えてもらっていました。
京都のお店はふと通り過ぎてしまいそうな小さくて上品な佇まいのところが多く、店内には店員さんが一人、あるいは二人ということも珍しくありません。

最初に訪れたのは天保3年(1832年)創業の『京扇堂』。伝統を感じさせる、美しい扇子店です。
日本舞踊用の舞扇(竹骨の折りたたみ扇子)は思わず見入ってしまうようなデザインが並び、中には手に取りやすい価格のものもありました。
また茶道用の扇子のコーナーもあり、それは小さく一度も開かれることのないような、実用というより象徴的な存在の扇子。控えめなものから驚くほど高価なものまで揃っています。
涼をとるための夏扇子も、別の一角に並んでいました。

次に訪れたのは、元禄2(1689)年創業の京うちわ専門店『阿以波』。
以前にも通りかかり目にした、花や鳥が繊細に型押しされた平扇が中心のお店です。今回は足を止め、じっくりとその美しさと技に向き合いました。
そしてすぐにお気に入りのお店のひとつになりました。
店員さんとやり取りをしながら細部を見比べ、15分ほどで団扇を3本選びました。

最後に立ち寄ったのは、文政6年(1823年)創業の『宮脇賣扇庵』。
時間は20分ほどしかありませんでしたが、私の好みははっきりしています。
以前から舞扇が好きでしたが、日本舞踊に戻ってから、その魅力をより深く感じるようになりました。
手描きの意匠、構図の美しさ、そして何より、金箔の放つやわらかな輝きに心惹かれます。
会計の際、ふと目に留まったのは堂々と描かれた七福神の扇子でした。
若い店員さんが「縁起がいいですよ」と声をかけてくれ、その言葉に自然と背中を押されました。

ここ数年で、扇子の価格がずいぶん上がっていることにも気づきました。
おそらく、海外からの観光客の増加による影響なのでしょう。

一方で今の京都は以前に比べて人出が落ち着き、歩きやすく心地よい街に感じられます。
それでも、季節の旅行需要を頼りにしてきた地元のお店のことを思うと、少し心配な気持ちも残ります。

日本の人たちが改めて京都を訪れ、職人や伝統、そしてこの街の静かな美しさを支えてくれたら・・・。
そう願っています。

旅が与えてくれる本当の贈り物は、計画していた場所を見ることではなく、何に気づき何を深く味わえるか、なのかもしれません。
そしてそれこそが、京都という街を特別な存在にしているのだと思います。

 

 

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