HIROSIH MIKAMIの「HEDWIG AND THE ANGRY INCH(ヘドウィグ・アンド・アングリーインチ)」を観て 〜若き日、共に時間を過ごした彼を観て人生を想う〜
先日、スカルプケアの施術を受けに行ったとき、サロンの机に「HIROSHI MIKAMI(三上博史)」と書かれたパンフレットが置いてありました。それを眺めていたら、若き日のHiroshiとのクラブでの記憶がふっとよみがえりました。当時、彼は働きながら俳優を目指していました。
あれから30~40年が経ち、彼は「HEDWIG AND THE ANGRY INCH(ヘドウィグ・アンド・アングリーインチ)」というミュージカルでトランスヴェスタイトを演じていると知りました。若き日のHiroshiを思うと彼が今どんな風にその舞台に立つのかを思うと複雑な気持ちにもなりましたが、迷った末にチケットを購入し、会場へ足を運びました。
Hiroshiが登場した瞬間、会場中の観客が一斉に立ち上がり、その熱気に圧倒されました。私も思わず立ち上がり、彼の世界に引き込まれました。でも残念ながら私は歌の歌詞をほとんど理解できませんでした。ナレーションやコメントの一部はわかったものの、それらをつなげても完全には理解できない感じ。でも、もしかしたらこの公演は「理解する」ものではないのかもしれない、とも感じました。
これまで見たどのステージとも違う、不思議な体験でした。「女性として自由に生きたいと願いながら、社会の壁に阻まれる男性」である彼のメイクはグリッターをふんだんに使っていて、パフォーマンスは野生的で、狂気をはらんでいて、どこか感情的に極限状態にあるようでした。
私が知っているHiroshiは、まだ20歳の純粋で無垢な青年。当時、私はフランス人モデルでシンガーの友人とよく一緒に過ごしていたのですが、彼女もまた美しく、Hiroshiの音楽や人生に影響を与えたのではないかと、今でもふと思うことがあります。
20歳の頃のHiroshiは「かわいい」という印象でしたが、62歳になった今も変わらずハンサムで、純粋で、自分に正直です。そんな彼を心から尊敬しています。Hiroshiはきっと誰も歩いたことのない道を自分で切り拓いてきたのでしょう。
舞台の上のHiroshiはとても自由に見えました。自分自身や自分の選んだ道を誇りに思っていることを感じ、私も嬉しくなりました。また観客たちが、彼を心から愛していることがひしひしと伝わってきました。
客席を見渡すと少し年齢層は高めでしたが、彼らみんながHiroshiを愛しているのです。彼のようなスターになるには、きっと並外れた勇気が必要だと思います。そして、その勇気に観客たちは魅了されているのではないでしょうか。Hiroshiは素晴らしい歌声を持っていますが、彼の歌はメロディーラインに乗らないので少し難解なところもありました。でもそれを補って余りあるカリスマ性があり、彼のパフォーマンスは圧巻で、完全に心を奪われました。
それに比べると、私の人生はずいぶん「保守的」な道を歩んできたと思います。でもその道を歩むこともまた私の選択でした。パートナーと共に旅をするような人生も素敵だったかもしれません。でも振り返ると、どの人も私を「私自身の道」から引き離し、その人の道へと導いてしまっただろうと思います。私は私を見失わないために、一人で進む道が必要だったのだと思います。
昨晩のステージでHiroshiの「今」を見て、彼の歩んできた道に思いを馳せつつ、私は人生そのものについて考えさせられました。
It takes a lot of work to find our true selves and a lot of courage to become all you are meant to be.
本当の自分を見つけ、自分がなるべき存在になるためには、たくさんの努力と大きな勇気が必要なのだと改めて感じたのです。